
舞台演出家 富田めぐみ
世界と共鳴する琉球舞踊
-琉球舞踊の魅力を教えて下さい。
県内だけでなくアフリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界中で琉球芸能公演の機会に恵まれました。
どの国で公演しても「琉球芸能は、なんと普遍的なんだろう!」と感じます。
MCや解説は現地語ですが、歌詞は島言葉のまま、振付も一切変えずに沖縄の舞台と同じように演じています。
豊作を祈る気持ち、大漁の喜び、切ない恋心・・・。普遍的な思いは、文化が違っても共通するものですよね。
世界中のみなさんが、沖縄独自の琉球芸能に共鳴してくださるのは、先人たちが、生活の中で感じる喜怒哀楽、神や自然への感謝の気持ちを、
振付や音の中に込めてきたからだと思います。長い年月をかけて洗練される中で、様式だけでなくそこに込められた思いまで一緒に伝承してきたからこそ、年齢や国を問わず、世界中の人に響くのではないかと思います。
本格的な演出デビューは、南フランスのアヴィニョンフェスティバルOFFでした。
劇場費がすごく高くて断念しそうになりましたが、奮起して野外公演をすることになりました。路上、公演、広場…。あらゆる場所で世界中のパフォーマーがしのぎを削っているので、よくなければ素通りされてしまいます。
滞在していた10日間のうちにファンがどんどん増えていって、広場いっぱいに幾重にも観客が集まり、大喝采を浴びました。
10年後に、同じフェスティバルで劇場公演が叶い、最高評価の5つ星をいただいたのは夢のようです。
一方で、沖縄の人たちは琉球舞踊があることが当たり前すぎて、逆にその素晴らしさに気づいてないんじゃないかなと思います。
ラジオ体操みたいに、かぎやで風(琉球古典音楽の代表的な楽曲。結婚式などの祝宴の幕開け等で多く演奏される)は県民みんな踊れたらいいですよね(笑)
体験してみて感じることもあると思います。
琉球舞踊と言っても、首里城で開花した古典舞踊や、明治以降の庶民の踊りである雑踊、空手舞踊やエイサーもありますし、とても多様です。
先人の美意識の高さを感じる衣装や小道具、豊かな音楽表現との関係など、入口も無限です。
もっと多くの方に届くよう、私達もその魅力を発信しないといけませんね。
こころの中に“琉球”を
琉球王国という国自体はすでに失われてしまっているにもかかわらず、琉球舞踊をはじめ今もなお文化として生き続けています。
これだけの苦しい時代を経験して、それでも先人たちは琉球文化を手放さなかった。薩摩の侵攻や大戦で消えていってもおかしくはなかったんです。
しかし先人たちは、苦しい時こそ歌って、踊って、自分たちを励ましながら、ずっと守ってきました。国自体を失っていても、その技や思いを受け継いでいく限り、私たちはこころのなかに「琉球」を持ち続けることができます。
これも一つ「国を守る」という形だと思うし、沖縄が世界に発信できる強烈なメッセージでもあると思います。
芸能そのものの素晴らしさもそうですが、この芸能が存在する意義も含めて、世界中の人たちとシェアしたいです。
それによって、励まされる人たちがいると私は信じています。
文化の継承と創造
-50年後、琉球芸能がどのように継承されていけばよいとお考えですか。
まず、先人たちが大切にしてきた伝統を、次の世代にきちんと継承していくことが大切だと思います。
子ども達と舞台作りをすることがありますが、指導されている先生方の情熱と必死で応える子ども達の姿に胸が熱くなります。
いろんな国と交流する中で独自の芸能が花開き、それが綿々と受け継がれ今日の舞台で観ることができるのは、一人一人が稽古場で汗を流してきた時間の積み重ねです。
それぞれの歌や踊りがどういう思いで生まれたのか感じながら、これからも継承されていくと思います。
先人の深い思いに触れることで、今日の私達の気持ちを表現する新しい舞台が創造されることに繋がると思います。文化の継承と創造は、沖縄がこれまでもずっとやってきたことなので、両輪で進み続けていってほしいです。
「まじゅん美ら花咲かさなや」
-美ら島おきなわ文化祭2022の開催にあたり、期待していることや応援メッセージ等があればお願いします。
「文化芸術の花咲いわたり」という大会テーマからもイメージされるように、文化や芸術を通して、みんなの笑顔の花やいのちの輝きに触れることができる機会になるといいなと思いますね。舞台の上も下も一緒に、見ている人も出ている人もみんなで、
沖縄の文化が今日まで継承され花開いた喜び、生きている喜びを共有したいです。
「まじゅん美ら花咲かさなや」みんなで一緒に美しい花を咲かせましょう。